片頭痛日記のつけ方:何を、どのくらいの期間記録するか
片頭痛日記(頭痛ダイアリー)のつけ方を実践的に解説します。発作のたびに記録する4つのこと、任意で加える項目、やってはいけないこと、受診前にどのくらいの期間つければよいかをまとめました。
片頭痛日記のつけ方を先にまとめると、こうなります。発作のたびに、始まった時刻、終わった時刻、痛みの強さ、薬を飲んだかどうかを書きます。頭痛がまったくなかった日にも印をつけます。受診の少なくとも2か月前、できれば3か月前から続けます。ほかの項目はすべて任意です。
私は5歳のころから片頭痛があり、日記もあらゆる形で試してきました。神経内科でもらった紙のカレンダー、メモアプリ、表計算ソフト、そして最後に自分のために作ったアプリ。この記事には、始めたころの私に誰かが教えてくれていたらよかったと思うことをまとめました。
医師が片頭痛日記を求める理由
片頭痛は、画像検査や血液検査で確かめることができません。The Migraine Trustも、現時点で片頭痛を診断できる検査はないとはっきり述べています。診断は、医師が病歴を聞き取り、ほかの原因を除外することで行われます(The Migraine Trust, Diagnosis、英語)。日本頭痛学会の「頭痛の診療ガイドライン2021」でも、片頭痛の診断は問診と国際頭痛分類の診断基準にもとづいて行われます。同ガイドラインによると、日本の15歳以上における片頭痛の有病率は8.4%です(頭痛の診療ガイドライン2021、元データはSakai and Igarashi, Cephalalgia 1997)。
その病歴を医師に伝えるのは、私たち患者自身です。The Migraine Trustの同じ資料には、初診で医師が尋ねることが挙げられています。発作の頻度、痛みの強さ、ほかにどんな症状があるか、これまでにどんな治療を試したか(The Migraine Trust, Visiting your GP、英語)。2か月たってから記憶だけで答えようとすると、たいていこの数字はずれてしまいます。日記があれば、正確に答えられます。
毎回記録する4つのこと
日記のテンプレートの多くは、15以上の項目を並べています。天気、食事、睡眠、ホルモン、ストレス、画面を見ていた時間。頭が痛くて30秒しか余裕がないとき、15も項目があれば、結局何も書かずに終わります。ですから、どの医師も尋ねる4つのことから始めましょう。
- 発作がいつ始まったか。 日付と、おおよその時刻。
- いつ終わったか。 発作はふつう4〜72時間続くため(ICHD-3、1.1 前兆のない片頭痛、診断基準B)、終わるのが別の日になることも少なくありません。
- 痛みがどのくらい強かったか。 簡単な段階で十分です。軽度・中等度・重度の3段階でも、1〜10の10段階でもかまいません。いつも同じ基準で記録することが大切です。
- 急性期治療薬を飲んだかどうか、何を飲んだか。 1回飲むごとに1件記録します。あとで重要になるのは錠数ではなく、薬を飲んだ日数です。
これが、役に立つ記録の最小限です。この4つだけでも、「ここ何週間か調子が悪くて」というあいまいな説明より、ずっと参考になる日記になります。
役に立つ追加項目(すべて任意)
4つの基本が習慣になったら、次の項目も書いておくと状況がより伝わりやすくなります。
- 症状: 吐き気、光過敏・音過敏、見え方の異常。
- 前兆: あったかどうか、どんなものだったか。
- 痛む側と痛み方: 左、右、両側。ズキズキと脈打つ痛みか、締めつけられるような痛みか。
- 短いメモ: 受診のときに伝えたいことを、ひと言で。
ドイツの医療の質・効率性研究所(IQWiG)は、数週間から数か月にわたって発作の時刻、持続時間、痛みの強さ、薬を記録し、必要に応じて睡眠、ストレス、食事も書き加える日記を紹介しています(IQWiG, Migräne-Tagebuch、ドイツ語)。注目したいのは順番です。まず発作のデータがあり、影響しうる要因は最後に来ています。
やってはいけないこと
初日から誘因探しをしないでください。 始めたばかりの日記の多くは、毎回の食事や睡眠時間まで記録しようとして、その負担で続かなくなります。まずは発作の記録から始めてください。
初期症状を誘因と取り違えないでください。 多くの発作は、痛みが出る数時間前に予兆(前駆症状)から始まります。特定の食べ物が無性に欲しくなる、あくびが出る、気分が変わる、首がこわばる、といった症状です。The Migraine Trustは、こうした初期のサインが誘因と混同されやすいと指摘しています。火曜日の朝に無性に食べたくなったチョコレートは、その夜の発作の原因ではなく、発作の最初のサインだったのかもしれません(The Migraine Trust, Prodrome、英語)。
調子のよい日を飛ばさないでください。 悪い日しか書いていない日記は、実際よりも状態が悪く見えてしまいます。それに医師には、発作のなかった2週間なのか、記録を忘れていた2週間なのか、見分けがつきません。頭痛のなかった日にも、チェックひとつでよいので印をつけておきましょう。
どのくらいの期間つけるか、3か月が大切な理由
受診の少なくとも4〜8週間前から、できれば3か月前から日記をつけてください。理由は、医師が使う診断基準にあります。
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、慢性片頭痛を、月に15日以上の頭痛が3か月を超えて続き、そのうち少なくとも月8日は片頭痛の特徴をもつ状態と定義しています(ICHD-3, 1.3 Chronic migraine、英語)。
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)も、同じ期間で定義されています。日本頭痛学会の「頭痛の診療ガイドライン2021」とICHD-3の8.2では、単純鎮痛薬なら月15日以上、トリプタン、オピオイド、複合鎮痛薬なら月10日以上の使用が3か月を超えて続くことを基準としています(頭痛の診療ガイドライン2021、ICHD-3, 8.2)。これが自分の薬の使い方にとって何を意味するかは、医師に相談してください。日記にとっての意味はシンプルです。日数を数え、それを3か月続けることです。
紙かアプリか
どちらでもかまいません。紙ならお金もかからず、充電も要りません。病院で渡される頭痛ダイアリーなら、最初から医師が見慣れた形式です。欠点は、発作が始まったときに手元にないことが多いことと、月ごとの日数を自分で数えなければならないことです。
アプリなら、スマートフォンはたいてい手元にあるので、ベッドの中からでも発作の始まりを記録できます。記録がすべて一か所にまとまり、受診用のまとめを印刷することもできます。欠点は、アプリがひとつ増えることと、自分の病歴を入力する前に、データがどこへ送られるのかを確認しておく必要があることです。
どちらを選ぶにしても、実際に書き込まれる日記こそが正しい日記です。
アプリを使うなら
私がMigraniaを作ったのは、片頭痛の最中でも数秒で発作を記録したかったからです。Migraniaは発作と服薬を記録し、カレンダーと自分の記録のグラフで表示し、受診に持っていけるPDFを書き出せます。記録はお使いのiPhoneの中に保存されます。無料で、アカウントも不要です。
何を使うにしても、まず4つのことから始め、調子のよい日も記録し、3か月続けてみてください。そして受診の日には、それを持っていきましょう。